国公立・私立を問わず、医学部合格には高い学力が必要です。
「私立大学医学部なら国公立よりも簡単に入れる」と考えていらっしゃる方は、今すぐその甘さを切り捨てていただきたいと思います。私大医学部は入試科目に国語と社会がないだけのことだということ、今や国公立大学医学部と難易度に目立った差は存在しないというこの二点を、是非とも肝に銘じていただきたいと思います。
医学部合格に要求される学力水準が大変高いのですが、実際にはその学力に到達するためにどれくらいの時間が必要なのか、いつから受験勉強を始めればよいのか、このような疑問をお持ちの方は少なくないかと思います。
何においても絶対合格を勝ち取るというのは難しいものですが、それにしても合格の可能性を可能な限り高めておくには、どのような時間感覚をもっておけばよいのでしょうか。今回はこの問題を取り上げていきます。
現役合格を狙う場合 ― 高2修了時点での学力がポイント
よく、「医学部受験を無事に乗り越えるにはいつからスタートさせるのがよいのか」ということが問われますが、これは個人の置かれた状況によって変わります。ただ、一つ言えるのは、
・高校2年生終了時点で英語・数学の基礎学力は完成している
・高校2年生終了時点で理科の基礎学力が、少なくともある程度形成されている
このレベルに仕上げておくことが、医学部現役合格を目指すうえで大変望ましいということです。逆に言うと、「部活をやっているので、高3夏までは受験勉強ができない」という方は、よほどのことがない限り、現役合格は厳しいでしょう。
高校2年生終了時点で上記の条件がクリアされている方は、応用問題に当たることによってどんどん学力を高め、入試さながらの演習形式で受験における得点力を高めていくことが課題となります。
以上のような調子で受験準備が進められていきますので、高3から受験勉強を開始して現役合格を目指すことは、大変厳しいと言えます。それでも現役合格を目指そうという方は、基礎学力を急ピッチで身につけ、息つく暇もなく応用力増強にとりかかり、そのまま入試対策を行うという流れに乗らなければなりません。プロ講師の個別指導をつけることが強く勧められます。ただ、その場合であっても合格への道は険しいと言わざるを得ません。
健全な人間形成の観点から言って、部活しないことをお勧めすることは避けたいと思います。そのかわり、出来る限り早い時期から計画的に学力を積み重ねていくことをお勧めします。中学受験が出来る地域にお住まいならば、中学受験の勉強を経験しておくことは、後々ためになります。また、中学時代から英語や数学をしっかり固めておけば、高校時代に部活と受験勉強を両立させやすくなるでしょう。近年の入試制度の変動も踏まえ、英検に力を入れることはよい選択です。
各教科のお話が出ましたので国語についても申し上げておきます。国語はどうしても軽視されやすい科目ですが、全ての教科の成長に影を落とす、極めて重要な科目です。「書かれた文章の内容をしっかり理解する」「自分の考えを相手に伝わるように表現する」というこの二点をしっかり守って欲しいところです。
医学部に限らず、知的職業で生きていく方向性が決まっている場合には、早い段階から知性を養うことに取り掛かることをお勧めします。
高卒生の場合 ― 二年が目安
こちらも当然個人差があるのですが、基本的には二年以内に結果が出てほしいところです。
例えば国公立大学を志望する場合、こちらは前期と後期しかないのが普通ですから、残念な結果になった場合を考えておかなければなりません。可能性を追求するのであれば、産業医科大学その他の私大医学部を併願すれば、進学の可能性は劇的に高まります。
センター試験の成績が70%前後相当の実力の方、あるいは偏差値が55前後の方は、うまくやれば一年間の学習でさっくり医学部に進学してしまいます。たとえ一年目はうまくいかなかったとしても、二年目に進学先が出てくる可能性はかなりあると言えるでしょう。もしも学力の向上がうまくいかないなら、何が悪いのかをよく考えるべきです。
それでは偏差値がもっと低い方々、例えば偏差値40程度かそれ以下の方々の場合はどうでしょうか。これも実は上の場合と事情はさほど変わりません。指導に当たる講師は、例えば半年とかいった期間のうちに一通りの内容を教えようとプランを立て、指導します。予定通り進行した場合は半年後に一通りの知識がそろっていることになるのですから、こちらもうまく行けば医学部受験でいい勝負になるのです。
低学力からスタートして一年間で思ったほど成績が伸びなかった場合、なぜ成績が伸びなかったのかについては徹底的に原因を考える必要があります。例えば、
・自分の学力と指導がミスマッチだったのか、
・自習時間が足りていなかったのか、
・自習スキルが低くて、どうすれば学力が伸びるかがわからなかったのか、
・単純に学習能力の問題なのか、
など、考えられる要因はすべて考えて見る必要があります。
以上高卒生の場合について見てまいりました。どの場合についても言えるのは、二年という時間が一つの節目になるということです。
もちろん一年間の過ごし方でいろいろなことがわかるというのは言うまでもありません。
志望校にすんなり合格するためには早めの準備が大事です。そして、受験生が自分自身についてよく知り、自分が取り組む課題について、その取り組み方も含めてよく研究していくことの重要性についても、よくよく理解していただきたいと思います。
自分がただ漫然と流れに任せて狙いを定めることなく勉強していないか、実は非効率な時間の使い方をしていないか、このように自分の勉強スタイルについて常に気を使い、自分の持てるポテンシャルを最大限発揮できるよう身を整えていくところに、成功へのヒントがあるものです。