ハイレベルな選抜が行われる医学部入試。学科試験の対策はもちろん重要ですが、そのためにおろそかになりがちなのが「面接」対策でしょう。現在は、ほぼすべての医学部入試で面接が課されています。「たかが面接」と思う方もいるかもしれませんが、事前にきちんと対策をしておかなければ、せっかく学科試験で高得点を取ったとしても、面接での評価が最終的に足を引っぱりかねません。
面接対策をするには、そもそも「医学部入試でなぜ面接が実施されるのか」「大学側は受験生のどんなところを見ているのか」を理解しておく必要があります。医学部入試における面接の目的や意図を踏まえたうえで、受験生が心がけるべきポイントをお伝えします。
医学部入試の面接で問われるポイントとは
1:医師になる「覚悟」があるかどうか
まず、医学部入試の面接で問われることは「高い志があるかどうか」です。人命を預かる医師の仕事は責任が重く、相応の覚悟が求められます。「親が医師だから」「周囲から医学部受験を勧められたから」といった理由で医学部を志望している方も少なくないかもしれませんが、医師を目指す動機としては不十分とみなされる可能性が高いでしょう。
社会的な役割の大きい医師を目指す以上、それなりの使命感を持つことは重要です。いかに高い志を説得力のある言葉でアピールできるかどうかが、「医師になりたい」という気持ちの本気度を見極める試金石となります。医学部への合格は、あくまで途中経過でしかありません。その後に続く医師のキャリアをどのように築いていきたいか、その明確なビジョンを自分の言葉できちんと説明する必要があります。
2:アドミッションポリシーに即しているか
また医学部入試の面接では、一般的な観点として「医師の素質があるか」はもちろん、「各校の求める人物像に当てはまるか」も見られます。その指標となるのが、各医学部が掲げている「アドミッションポリシー」です。
アドミッションポリシーとは、各校の教育理念などにもとづく理想の学生像を明文化したものを指します。ここには、入学を志望する学生に対して各医学部が求める心構えをあらわしています。たとえば、東京慈恵会医科大学が掲げるアドミッションポリシーには、「変化する社会、多様な文化や人々の中での医療ニーズを学び、社会における医師の職責について学修することができる」といった項目があります。
アドミッションポリシーには各医学部の特色が反映されているため、受験校を決めた時点で一度は目を通しておくことをおすすめします。特に志望度の高い医学部の面接を受けるにあたっては、各医学部のアドミッションポリシーを踏まえたうえで、自ら思い描くビジョンを伝えるようにしましょう。
3:患者に寄り添う「人間性」を備えているか
医師は高度な専門性をもつ職業です。国家試験に合格して医師になるためにも、そして医師となって働くうえでも、継続的な知識の研鑚が欠かせません。ただし、実際には知識や技術といった専門性だけでなく、患者との信頼関係を築くための「人間性」も求められます。
昨今は「インフォームド・コンセント」や「セカンドオピニオン」といった考え方が一般的になりつつあります。病気や薬などについて患者にわかりやすい言葉で説明したりすることは、そもそも相手の立場を思いやる気持ちがなければ難しいでしょう。
そのため医学部入試では、ペーパーテストで高い専門性を身につけられるだけの学力を備えているかをはかったうえで、面接によって受験生の人間性を見極めているのです。健康に不安を抱える患者を思いやり、寄り添えるかどうかを含めて、医師としての適性を判断されると考えてください。
医学部入試の面接にどう対策すべきか
このようなポイントに気をつけて対策すべきと言っても、高難易の学力試験を突破するために受験生がしなければならないことは膨大にあります。そのため、優先度の低い面接対策に時間を割くことはあまり現実的ではないでしょう。実際に、小論文や面接の対策は後回しでよいと考えている受験生は少なくないはずです。
面接対策にまとまった時間がとれなくても、日頃から実践できることはあります。ぜひ習慣化してほしいことは、新聞記事などで社会的なニュースをチェックし、それに対する自分の意見をまとめておくことです。これは小論文対策にも活かされます。さらに、自らの意見を他人が理解しやすいように表現する練習も大切です。文章にまとめたり、先生や家族と話し合ったりすることで、表現力を身につけていきましょう。
また、実際の面接を想定して、「敬語などの言葉遣いに問題はないか」「相手の目をしっかり見て話せるか」といった点も事前に確認しておくと安心です。これらは「できて当然」と思われるかもしれませんが、意外と盲点になっていることもあります。印象にも大きく影響するところなので、一度は模擬面接を受けるなどして自分の所作を見直してみるとよいでしょう。所作は付け焼刃ではなかなか身につきません。改善すべきところが見つかったら、日頃から意識して正しい立ち振る舞いを心がけましょう。