医学部入試での面接試験
あっという間に2月になり、私立医学部入試では面接試験が行われています。今や全私立大学と九州大を除く国立大学が2次試験として面接を課していますが、以前は面接が課されない大学も多くありました。それが今の形になったのは様々な理由がありますが、とにかく面接試験が医学部入試において重要度を増してきたのは確かです。
医学部の面接試験と言うと、何か詳しい専門知識について聞かれたりするのかと考える方もいらっしゃるでしょうが、そんなことはありません。大学によって求められているもの、また、面接試験をどのくらい重要視しているのかは異なりますが、一般的に求められているものは「コミュニケーション能力」と「姿勢・意欲」です。難しい知識が必要というわけでもありませんし、考え方がこうでなければならないというのもありません。難しく考える必要はないのです。
しかし、現代の学生は思っている以上に面接試験を苦手とする方が多いです。これは情報化社会の中、「自分の頭で考える」ことや「人前で言葉を表現する」ことが苦手な若者が増えているからだと思われます。情報はSNS等を通して文字で入ってきて、それについての考え方も他人の意見が自分の頭を占有し、いつの間にか「自分自身で考え」「人に口で伝える」という経験が圧倒的に少なくなっているのです。
コミュニケーション能力とは
コミュニケーション能力を見られる理由は、「医師にふさわしい人物であることが必要だから」という方もいらっしゃいますが、僕は少し違うと思っています。医師になる前に医学生になるわけです。つまり「医学生としてふさわしいかどうか」という部分を見られているのだと思います。
医学部での勉強は他学部生と比べて圧倒的に「他人と協力して」の学習が多いです。チーム医療という言葉がメジャーになっていることからも分かるように、医療の世界ではチームで動くことが必須ですし、大学での試験勉強もいわば情報戦のような部分も大きいようです。最低限のコミュニケーション能力がないと、まず、医師になれない、という現状があるわけです。
対策は簡単です。自分が知り得た情報・学んだ知識について、人と話をすることです。友人と話すのが難しいようであれば、自分の家族や学校・予備校や塾の先生でも構いません。自分がどう感じたのか伝え、相手がどう思うのかを聞く、これが一番の対策です。もちろんすぐに身に付く力ではないかもしれません。正直に申し上げると、近道はないと思います。
しかし、十分な時間がないとしても、やるのとやらないのでは大違いだと思います。「もう遅い」と諦めるのではなく、できる限り自分の意見を話す機会を作っていきましょう。
姿勢・意欲について
姿勢・意欲というのは、簡単に言うと「本当に医師になりたいのか」ということです。
昔は「勉強はできるけど、将来の夢はない学生」は「とりあえず東大」と、東京大学を目指すことが多かったと思います。しかし就職への不安等から、「とりあえず医学部」という偏差値上位層が急激に増えました。それが今の医学部難化につながったわけですが、そういう学生は医学部に入ってから悩んで、自主退学したり、留年したりも少なくないようです。大学側としては、医学部に入った生徒が進級し、医師国家試験にストレート合格するのが理想ですから、「とりあえず医学部」という学生は不安です。なので、面接試験で本当に医師になりたいのかを確認したいのです。
面接試験の練習
しかし、面接試験にはもちろん限界があります。面接にかなりの時間を割いている大学もありますが、ほとんどの大学では10分~20分の限られた時間での面接試験となっています。
面接官の先生方はもちろん目が肥えている方ばかりだと思いますが、即席の面接練習でも、十分にD評価をC評価に、C評価をB評価にすることはできます。入試本番の面接の形式・質問内容等の情報はたくさん出回っていますので、学校・塾の先生に相談して面接練習をしてもらいましょう。
面接官役をする側に専門的な知識がなくても、質問に対しての返答がどう聞こえるか、より良い答え方はあるか、等の相談はできるはずです。また、面接用のノートを作って、返答に詰まった問いについては一度書いて整理することをお薦めします。(もちろん箇条書きやメモで構いません。綺麗に作った文章を丸暗記するのは基本的にお薦めしません)
一発アウトはあり得る
今まで述べてきた内容からも、医学部の面接試験では、最低限の対話能力と事前の準備があれば、高評価とはいかないまでも、乗り越えることは可能であることが分かると思います。しかし、知っておいていただきたいことは「一発アウトはあり得る」ということです。特に、傲慢・横柄な態度や人命を軽んじるような発言は絶対にNGです。もちろん医師を志す方にそのような方は少ないと思いますが、面接試験で注意すべきなのは「自分がどう思っているか」ではなく、「相手にどう見えるか」ということです。
例えばチーム医療について聞かれた時に、医師が「リーダーとして自分の考えを医療スタッフに理解してもらうべき」というと、場合によっては「他のスタッフの考えは聞かなくていい」と思ってるのかな?と捉えられてしまい、傲慢に映ってしまうかもしれません。それでは勿体無いので、面接官からどう見られるかを意識して使う言葉を変えてみましょう。
「人命を助ける現場なので、チーム一丸となる必要がある。医師はリーダーとして、医療スタッフ全員でチームが目指す方向を共有できるように努めるべき」というと、傲慢なリーダーではなく、責任感が強く気を配れるリーダー像を見てもらえるのではないでしょうか。
とっさの回答で適切な言葉を使うには、やはり面接練習が必須なのです。
面接試験について、いろいろと述べさせていただきました。他にも書ききれないことはたくさんありますが、少しでも読んでいただいた方の参考になれば幸いです。